72 「事件は現場で起きている」

欠陥住宅が社会問題になり、行政も多くの手段を検討しているようです。 中間検査も実施されるようになりました。 また欠陥住宅の補償も検討されています。 でも私たちは 「欠陥住宅をなくすには住宅産業の構造が変化しない限り不可能だ。」 と断言します。 今回のコラムでは住宅産業の構造の問題の一つ、 建築現場で起こっていることをお話します。 家は職人さんたちが作るものです。 この職人さんたちが劣悪な環境で働いていたなら、欠陥住宅を防ぐことが出来ません。 これはプレハブメーカーでも同じです。 基礎や地盤改良、建具などの多くが現場の職人さんの手によるからです。 御存じない方も多いと思いますが、有名メーカーの中には一人前の職人さんに 学生アルバイト程度の日当しか出さないところがあります。 住宅着工数が下がり、職人が仕事が少ないのにつけこんでの行為です。 「この日当なら仕事をやるよ。」という感じです。

多くの職人さんは別の仕事に転職してしまいました。 でも転職できない職人さんは受け入れて働くしかありません。 その会社の現場ではだれも喜んで働いてはいないのです。 さらに多くの大手メーカーでは職人の作業代を勝手に値引きします。 職人さんは10万円の仕事をもらっても、仕事が終わってからメーカーからFAXが来ます。 そこには「今回の工事は○○万円値引きします。」とあり、反論は許されません。 文句を言うと次の仕事がなくなるからです。

では職人さんはどんな気持ちで家を作っていると思いますか? それでメーカーは職人から施主に悪い情報が伝わらないように箝口令を敷きます。 だから職人さんは余計なことをしゃべることはありません。 有名メーカーで家を建てている方はぜひ現場に行ってください。 そして缶ジュースでもぶら下げて職人さんたちとお話して欲しいのです。 はじめは相手をしてくれますが、ちょっと突っ込んだ話をするとトーンが下がり 「現場監督さんと話してくれませんか?」となります。忙しいからではありません。

本当は職人だって施主さんと話がしたいのです。 でも余計なこと(本当のこと)を喋った事がばれると職人さんは 次の仕事がもらえなくなります。 私には見えない猿ぐつわがされているように感じます。 そしてこのゆがみのツケは施主さんに回ってくるのです。 河北新報 平成16年4月30日 『特集・欠陥マイホーム<3>』で、 ある職人が心情を吐露していました。 「職人人生30年、手抜きをしたくてするわけはない。ただこっちだって生活がある。」

多くのメーカーでは現場監督が不在です。 職人は見えないところで手抜きをするしかありません。 欠陥住宅をなくす。 それは法律の問題でも理屈の問題でもありません。 青島刑事ではありませんが「事件は現場で起きている」のです。


 

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